母の闘病

10.エンゼルケア

看護師さんからこれから行う処置の説明を受け、一度家族は退室しました。 退院するときの服を準備できていなかったので、病院で用意してある浴衣から初夏らしい明るい花柄のものを選びました。 看護師さんにお化粧してもらった母の顔はとても穏やかで、本当…

9.臨終

母は朝から言葉を発することができなくなっていました。 声をかけても反応はなく、苦しそうに喘ぐような呼吸をするだけ。 一見、苦しそうに見える呼吸は、下顎呼吸というもので実は苦しいわけではないんだそう。ただ、この呼吸が見られるとあと数時間~数日…

8.ふと気づくと

2度目の月命日が過ぎました。 まだまだ、悲しみは癒えません。 むしろ増してきているような。それとも、押し込めていた感情が表に出てきたのか。 悲しいような、実は現実じゃないような… 頭では母が亡くなったことを現実として理解しているのに、何故だかな…

6.最期に向けた覚悟

ホスピスから退院するときは決して亡くなったときばかりではないそうだ。とはいえ、終末期の癌患者が入院する場所。ほとんどの患者さんは息を引き取って自宅へ帰ることになるのだと思う。ここでは積極的な治療はせず、痛みを取り除くことが中心となる。患者…

5.ホスピスへ

ホスピスへ転院するにあたり、母を搬送するための介護タクシーを手配するよう、病院から言われていたのでネットで探してみた。移動中の点滴は?モルヒネもあるし。車椅子?ストレッチャー??ナースステーションで相談してみよう。すると、救急車に先生付き…

4.がん化学療法科病棟

母が最初に入院した病院は、私が5年前に息子を出産した総合病院だった。私が入院した産科病棟の賑やかさとは全く異なる静かな病棟。面会室からは岩手山が見えた。私が息子を産んだ翌朝、病室からも岩手山が見えた。3日がかりで出産したあと疲れた体を起こし…

3.闘病のはじまり

母が入院後、初めて病院を訪れた翌日、父と再び母の病室へ。母は点滴をガラガラと押し面会室へ。何か食べられないのか?と言う父に対して母は、ダメよ、詰まっている(腸閉塞)んだから危ないでしょ?と。そして、落胆する父に母は淡々と高額療養費の説明を…