6.最期に向けた覚悟

ホスピスから退院するときは決して亡くなったときばかりではないそうだ。
とはいえ、終末期の癌患者が入院する場所。ほとんどの患者さんは息を引き取って自宅へ帰ることになるのだと思う。

ここでは積極的な治療はせず、痛みを取り除くことが中心となる。
患者を除く、家族と病院スタッフとの面談で伝えたことは、できるだけ痛みを取り除いてやりたいということ。
そして、万が一のときの蘇生処置は希望しないこと。
蘇生処置の際、肋骨が折れて却って苦痛を与えることもあるから。
それだけしてももう治らないのであれば痛みや苦しみから解放したい。
でも、処置をすればほんの少しでも生きられる時間は延びるのだろうから、それをしないでほしいと伝えることは辛いことだった。

みんなそれぞれに覚悟は決めた。
残りの時間を少しでも穏やかに過ごしてほしい。
きっと家族全員の願いだったと思う。