11.退院

部屋の私物を片付けていると、葬儀屋さんが到着しました。

母に向かい合掌する葬儀屋さん。

なんで手を合わせているんだろ、寝てるだけなのに?と一瞬思い、すぐに、ああそっか、そうだった。と思い直しました。

ベッドで穏やかな顔で寝ていた母はシーツで包まれストレッチャーへ。

ここでもまた、なんでそんなすっぽりと??あ、あーそうだった。

まだ現実として受け入れてなかったんだと思います。

未だに、夢で見た景色のようなぼんやりとした記憶です。

 

荷物も全て片付け、がらんとした病室で父の呟き。

 

「今まではここに来れば会えたのにな」

 

駐車場に出て、ふと見上げると星が空一面に眩く輝いていました。

郊外の病院だから暗くて運転怖いな、って思っていたけど、こんなに星きれいに見えるんだー。

母の荷物を母の車に積み込み、実家へ向かいました。