10.エンゼルケア

看護師さんからこれから行う処置の説明を受け、一度家族は退室しました。

退院するときの服を準備できていなかったので、病院で用意してある浴衣から初夏らしい明るい花柄のものを選びました。

看護師さんにお化粧してもらった母の顔はとても穏やかで、本当にただ眠っているだけのように見えました。

家族で母の手足を石鹸で洗い優しくタオルで拭いて、看護師さんがお花を持ってきてくださり、母の手に持たせてくれました

私が編んだブーケも一緒に。

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青いバラ花言葉は「奇跡」

告知されたとき、すでにステージⅣで手術不可能でした。

「頑張るよ」と笑顔で言った母を想いながら編んだ青いバラの花。

もしも、助かるのであればコサージュとして使ってくれたらいいし。

でももしものときは旅立つときに持って行ってね。

そんなことを思いながら、母の日のプレゼントとして渡した小さなブーケ。 

 

エンゼルケアを終えて、ここからは葬儀屋さんにお世話になります。

連絡をしたものの、到着は遅い時間になるそう。

忙しいんだな。ここ以外にも亡くなったばかりの人はたくさんいるのだろうな。

 

近くの店でお弁当を買い、夕食を済ませ葬儀屋さんを待つ。

その間、やはり母は静かに眠っているようにしか見えず、時折寝息が聞こえたような気がしては、ああ、違う、気のせいか。の繰り返しでした。